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「高血圧パラドックス」──治療法はあるのに、なぜ血圧が下がらないのか

🌿 はじめに
先日、高槻市の高血圧・心不全対策プロジェクトチームの講演会で、私は座長を務めさせていただきました。
高槻市、医師会、薬剤師会、歯科医師会、大阪医科薬科大学、そして地域医療機関が力を合わせて“市民の血圧と心臓を守る”という目的で立ち上がった、とても意義のある取り組みです。
その中で、ある言葉が強く印象に残りました。
それが── 「高血圧パラドックス」 です。

💬 「高血圧パラドックス」とは
「高血圧パラドックス」とは、
“高血圧はよく知られ、治療法も確立しているのに、実際には多くの人の血圧が十分に下がっていない”
という矛盾のことを指します。
つまり、「治せる病気なのに、治りきっていない」
という不思議な現象です。
日本では、高血圧の治療を受けている人のうち、目標値まで血圧が下がっているのは半分以下ともいわれます。
薬もある、知識もある、なのにコントロールできていない──。
それがこの「パラドックス(逆説)」なのです。

🧩 なぜ、こんなことが起こるのか
理由はいくつかあります。
• 高血圧は痛くもかゆくもない病気なので、自覚しにくい
• 薬の服用や生活習慣の改善を長く続けるのが難しい
• 医療者側も「もう少し様子を見ましょう」と治療を控えめにしてしまうことがある
• 忙しさや経済的理由で受診が後回しになることも
このように、知識と行動の間に小さなギャップが生まれ、それが積み重なってパラドックスを生んでいるのです。

💡 大切なのは「知ること」と「続けること」
高血圧は、正しく知って、続けて取り組めば必ず改善できる病気です。
生活の中でできることはたくさんあります。
• 家庭で血圧を測る習慣をつける
• 塩分を控えめに、体重・睡眠を整える
• 薬を“義務”ではなく、“血管を守るサポート”と考える
小さな一歩の積み重ねが、確実に血管と心臓を守ります。

🕊️ これからの「高血圧」シリーズへ
この「高血圧パラドックス」をきっかけに、
これから数回にわたって「高血圧」をテーマにブログをお届けしていきます。
• 最新のガイドラインで変わったこと
• 家庭血圧の正しい測り方
• 食事・運動・睡眠の工夫
• そして、心臓や腎臓との深いつながり など
地域の皆さんが“血圧を自分でコントロールできる力”を持てるように、
私たちも情報をわかりやすく発信していきます。

おわりに
高血圧は、放っておくと「静かに血管を傷つける病気」です。
でも、正しい知識と少しの努力で、きちんと守ることができます。
松本ほがらかクリニックは、これからも地域の皆さんと共に、“ほがらかな明日のために今できること”を大切にしていきます。