循環器について
循環器は、あまり一般的には知られていない診療科ですので、「どんな治療をしているのか分からない」と感じる方もいらっしゃると思います。循環器とは、心臓と全身の血管を指す言葉です。循環器科では高血圧や動脈硬化、コレステロールなどの生活習慣病を含む血圧や血管、そして心臓の疾患に主に関わっています。
日本人の最も多い死因ですが、実に1/3が循環器系の心臓疾患や脳血管疾患となっています。高血圧や脂質異常症(高脂血症)、糖尿病などの生活習慣病は症状が自覚しにくく、進行して動脈硬化を進行させます。そのため、生活習慣病での適切な治療を受けずに、血管の状態を正確に把握していないと、突然心筋梗塞や脳梗塞を引き起こす危険性があります。
「健康診断で心臓に雑音が指摘された」「歩行中に息切れや動悸が気になるようになった」「時折、脈が飛ぶ」という症状がある場合や、生活習慣病の治療を受けており、血管の状態に不安を感じている方は、お気軽にご相談ください。
当院での対応疾患について
動脈硬化
動脈硬化は、動脈の血管壁にプラークが蓄積し、血管が硬化し、柔軟性を失って狭小や閉塞を招く状態です。
生活習慣病や高血圧、脂質異常症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群などにより進行リスクが高まり、心筋梗塞や脳卒中などの重篤な疾患を発症するリスクも伴います。
血管内の内皮細胞がダメージを受け、脂質異常症により血液中に悪玉のLDLコレステロールが増えると、傷口から浸入し、内部で酸化して有毒性の酸化LDLに変わります。
酸化LDLは免疫細胞のマクロファージが異物と判断して摂取し、分解しますが、酸化LDLが過剰となるとマクロファージが死滅してしまいます。
マクロファージの死骸が蓄積し、粥状のプラークとなって蓄積されます。このプラークにより、血管の狭小病変や繊維化が引き起こされ、組織が硬化し、動脈硬化が生じます。
動脈硬化は進行しても目立った症状がなく、突然、心筋梗塞や脳卒中などの病気を発症するリスクがあります。したがって、生活習慣病がある場合は、動脈硬化の重症度を把握し、定期的な検査や適切な治療を受けることが不可欠です。予防するには、健康的な食習慣・適度な運動、禁煙、ストレスコントロールなどの生活習慣の改善が欠かせません。時には、医師の指導のもとでの薬物療法や手術も選択します。
閉塞性動脈硬化症
足の血管で発生しているのは動脈硬化です。この疾患は、名前の通り動脈の血管が硬直し、柔軟性がなくなり、血液を円滑に送ることが難しくなり、さまざまな障害を引き起こします。通常、足は運動時に通常の10倍近い血液を必要としますが、動脈硬化があると必要な血液が行き渡らず、筋肉には乳酸などの疲労物質が蓄積され、足に痛みが生じます。階段や坂道を登る際に足の痛みがある場合、閉塞性動脈硬化症の可能性が考えられます。
足の動脈硬化が進行している場合、その70%は脳や心臓でも動脈硬化が進んでいるとされており、足の痛みに気づいたら早めに受診し、適切な治療を受けることが重要です。早期の治療を受けることで、脳や心臓に重篤な発作を予防できたケースも決して少なくありません。当院では、最新の装置を使って血管の動脈硬化を測定し、閉塞性動脈硬化を含む疾患の早期発見に努めています。気になる症状がある場合は、お早めにご相談ください。
不整脈
心臓は常に規則的に収縮・拡張を繰り返し、決して止まることはありません。この規則的なリズムは、電気的刺激によって起こりますが、その刺激に問題が生じると、心拍数や心臓の鼓動が乱れるのが不整脈です。
不整脈には経過観察だけで問題ない場合もありますが、まずはどの種類の不整脈かしっかりと専門医に診てもらうことが肝要です。不整脈の患者数は相当多く、健康だと思っている方でも症例が見られることがあるので、油断は禁物です。
狭心症
冠動脈の狭窄などにより血液の流れが悪化し、虚血状態になります。代表的な症状には胸の痛みや締めつけられるような圧迫感があります。静かにしていると心臓の鼓動が安定し、痛みも和らぎます。とは言え、痛みが和らいでも命に関わる危険性のある状態であり、心筋梗塞の兆候も考えられるため、速やかに診察を受けてください。狭心症には負荷性狭心症と変異性狭心症(冠攣縮性狭心症)の2つのタイプが存在します。
心筋梗塞
狭心症より虚血の程度が強く、冠動脈が閉塞して完全に詰まる疾患です。そのため、心臓の筋肉の一部に壊死が起こります。左胸付近を中心に非常に激しい痛みや圧迫感が生じますが、腹部や胸の中心が激しく痛むケースもあるため、注意が必要です。この場合は迷わずに救急治療を呼んでください。
心臓弁膜症
心臓は左心房、左心室、右心房、右心室という4つの部屋から成り立っています。それぞれの部屋や血管との間には、逆流を防ぐ弁が設置されており、開閉することで機能します。
心臓弁膜症とは、これらの弁が何らかの理由で正常に機能しなくなる状態を指します。加齢、感染、外傷、先天的異常などが弁の不全の原因となります。心臓弁膜症は全ての弁で発症する可能性がありますが、その95%以上が大動脈弁と僧房弁に見られるとされています。
心筋症
- 肥大型心筋症:心筋の厚さに異常が起こる病気
- 拡張型心筋症:心筋が薄くなり心臓の内腔が拡張する病気
- 拘束型心筋症:心筋が硬くなる病気
心筋症は、心臓の筋肉である心筋が何らかの原因で異常を起こすことにより、心臓の機能が低下する病気です。この病気は3つのカテゴリーに分類され、全て心筋の異常により、心臓の基本的な機能である、全身に血液へ届ける能力が低下してしまいます。
心不全
心臓が全身に血液を送り届けるためのポンプ機能を持っているにもかかわらず、その機能が低下してしまい、体中に送られる血液量が不足する状態を指します。血液循環量が必要なだけ確保できなくなり、様々な症状が生じる可能性があります。心不全は欧米では一般的な疾患であり、日本でも西洋化した食生活などから増加しているため、注意が必要です。
症状別でのトラブルについて
動悸・鼓動が激しい
通常、運動や緊張、高い発熱などによって脈拍のスピードが速くなると、胸がドキドキする動悸を自覚します。
しかし、そうした状態でもない時に不規則な動悸を感じた場合は、頻脈性の不整脈が考えられます。心電図を取り、心臓の動きに異常がないかチェックしましょう。
脈が飛ぶ・不規則になる
脈が飛ぶ、不規則になる状態は「不整脈」と言います。不整脈には、経過観察だけで十分な軽度のものから、直ちに入院が必要な重度のものまで様々です。当院では、クリニックでの心電図検査に加えて、ホルター24時間心電図モニターを使用して種類を特定する検査を行っています。不整脈には様々な治療法があり、心臓に異常がない場合でも、ストレスや睡眠不足、過労などの影響で発症することもあります。まずは専門医に相談し、適切な検査を受けてください。
胸の圧迫感・痛み・重たく感じる
循環器障害による痛みには、狭心症や心筋梗塞、大動脈疾患だけでなく、肺の病気、食道や胃の問題、胆石、肋間神経痛などが含まれます。症状が明確であれば、すぐに原因が分かることもありますが、そうでない場合も多いため、注意が必要です。心筋梗塞など、適切な治療が迅速に必要な状況では、首や肩の痛み、胃や腹部の不快感が最初に現れることがあるため、ご留意ください。
血圧が高くなる
血圧が高いままだと、動脈硬化が進み、脳卒中や心筋梗塞などの重篤な疾患のリスクが高まります。身体を少し動かしたり緊張したりすると、血圧が上昇するだけでなく、毎回の測定結果も異なることがあります。自宅で血圧を測る際には、5分間座り、安静にしてから計測しましょう。さらに、数分置いて3回測定し、平均値を記録する方法もお勧めします。
ご自宅で安静時に測った血圧が130/85mmHg以上だった場合、高血圧治療の対象とされます。一般的な治療法は、塩分の制限(1日6g以下)や標準体重の維持がメインとなりますが、これらの生活習慣の改善だけでは改善が見られない場合、血圧を下げる薬が処方されることもあります。
また、様々な状況での血圧測定を行うことは、適切な治療方針を導く上で役立ちます。無理なく行える限り、起床後1時間以内や排尿後、服薬前、朝食前、朝食後など、それぞれの測定値をメモして記録しておいてください。
呼吸が苦しくなる
心不全、喘息、肺疾患などが疑われ、重篤な発作が起こる可能性も考えられるため、放置は危険です。無理せず、速やかに循環器科を受診してください。
むくみが認められる
細胞外に余分な水分がたまる状態をむくみ(浮腫)と言います。心臓疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、甲状腺疾患、栄養失調などによって引き起こされることがありますが、心配の必要がないケースもありますし、緊急の治療が必要な場合もあります。特に、むくみが改善しない場合や症状が悪化している場合には、できるだけ早く受診が必要です。夜間に足がむくむ、指で押しても凹みが戻らない、だるさや不快感を感じる場合も、早急にご相談ください。
コレステロール、中性脂肪の数値が高い
コレステロールや中性脂肪の数値が高い場合、それは高脂血症と称されます。また、善玉コレステロールの数値が低い場合も含め、脂質異常症と呼ばれることがあります。脂質異常症は自覚症状が少なく、そのままにすると心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化に寄る疾患の発症リスクが高まります。
血糖が高いという指摘を受けた
糖尿病または腎性糖尿病の恐れがございますので、お早めに検査を受けることをお勧めします。
糖尿病において、高い血糖状態が続くと全身の血管への負荷が大きくなり、動脈硬化が進行すると、発症リスクが高まるのは脳卒中や心筋梗塞だけではありません。眼の網膜症による失明や腎症による腎不全での血液透析、神経症による痺れ・痛み、足の壊疽による切断などの合併症が生じるリスクもあります。
これら多くの深刻な疾患に繋がる恐れがあるため、厳密な食事メニューや運動療法も欠かせません。そのため、病状を理解し、食事療法の重要性を学ぶための教育入院を強くお勧めします。
スマートウォッチの心電図で不整脈が検出された
スマートウォッチには、様々な体の状態をリアルタイムで把握する機能が備わっています。このスマートウォッチには、厚生労働省から承認を受けている家庭用心電計プログラムや家庭用心拍数モニタプログラムが装備されています。
スマートウォッチで心房細動の疑いの通知を受けるか、心電図データの解析で「高心拍数・低心拍数・判定不能」などが表示された場合、不整脈の可能性が考えられます。心房細動は重い脳梗塞を引き起こす危険性がありますが、患者様の25%には症状が現れないと言われています。症状がない場合でも治療が必須で、放置すると心不全や脳梗塞に繋がる恐れがある不整脈を発見するのに、スマートウォッチは役立ちます。
ただし、スマートウォッチの通知は正確な診断ではないことに留意してください。スマートウォッチから通知があったら、できるだけ早くご相談ください。
当院では、問診やデータをチェックした上で、専門的な検査を実施し、診断後にデータと検査結果を詳しく説明し、必要な治療に導いています。
心臓血管手術後のフォローについて
心臓血管手術後のケアフォローは、松本ほがらかクリニック阪急高槻市駅前にて丁寧に実施しております。
手術後の定期的な検査を受けながら、血圧や投薬の管理をサポートします。
また、日々の経過を注意深く観察し、異変に気付いた際には適切な措置を講じるため、速やかに当院へご紹介いたします。
セカンドオピニオンについて
もし心臓血管に関するセカンドオピニオンが必要であれば、お気軽にご相談ください。不安や疑問点に対し、的確なアドバイスを提供いたします。