甲状腺機能低下症とは?
甲状腺ホルモンが何らかの原因で不足すると「甲状腺機能低下症」となり、体のさまざまな働きが低下します。
原因は大きく2種類に分けられます。
- 原発性甲状腺機能低下症:甲状腺そのものに異常がある場合(代表が橋本病)
- 中枢性甲状腺機能低下症:脳の下垂体や視床下部の異常により、甲状腺への指令がうまく出ない場合
甲状腺機能低下症の症状
甲状腺ホルモンが不足すると、全身の代謝が低下し、次のような症状があらわれます。
- 足がつりやすくなる
- 皮膚が乾燥しやすく、かゆみが出る
- 寒さに弱くなる
- 疲れやすい、体がだるい
- 体重が増える
- 顔や手足がむくむ
- 便秘がちになる
- 月経不順や月経過多
- 妊娠しにくくなる、不妊や流産のリスクが上がる
更年期障害やうつ病に似た症状も出るため、自己判断せず専門医の診察を受けることが大切です。
橋本病(慢性甲状腺炎)について
橋本病は、甲状腺に慢性的な炎症(慢性甲状腺炎)が起こり、甲状腺の機能が徐々に低下していく病気です。自己免疫疾患のひとつに分類されます。
- 患者数:女性に多く、男性の約20倍。女性では10人に1人が発症すると言われています。
- 年齢層:特に20代半ば~40代の女性に多い傾向があります。
- 症状:初期には無症状のことが多く、進行すると甲状腺機能低下症の症状が出てきます。
実際に甲状腺機能が低下するのは全体の20〜25%程度で、橋本病と診断されても必ずしも症状が出るわけではありません。 また、ごくまれに甲状腺悪性リンパ腫につながることがありますが、大部分は良性で日常生活に大きな支障をきたさない病気です。 ちなみに「橋本病」という名前は、この病気を世界で初めて報告した日本人医師・病理学者の 橋本策(はかる)先生 に由来します。
橋本病の原因
橋本病は自己免疫疾患の一種で、免疫システムが誤って自分の甲状腺を攻撃することで発症します。 なぜ自己免疫反応が起きるのか、まだ完全には解明されていませんが、遺伝的要因や環境因子(ストレス、感染、出産など)が関与すると考えられています。
橋本病の検査・診断方法
診断には主に 血液検査 と 触診 を行います。
- 血液検査:甲状腺ホルモン(FT4、FT3)、TSH、抗甲状腺抗体(TPO抗体・Tg抗体)の有無を調べます。
- 触診:甲状腺の腫れやしこりがあるかを確認します。
- 超音波検査:必要に応じて甲状腺の形や大きさを調べます。
これらを総合して診断します。
橋本病の治療
橋本病そのものを治す治療法はありませんが、甲状腺ホルモンの不足を補うことで症状を改善できます。
- 無症状・機能正常:経過観察
- 機能低下あり:甲状腺ホルモン補充療法(内服薬)
- 腫れが大きい場合:ごくまれに手術で甲状腺摘出を検討
補充療法は体に不足しているホルモンを自然に補うだけの治療であり、副作用も少なく、妊娠希望の方や妊娠中の方にも安全に使用できます。