ちょっと気になる“糖尿病”のお話⑥
こんにちは。松本ほがらかクリニック阪急高槻市駅前の渡邉です。
今回のテーマは「血糖値が上がりやすい時間帯とその理由」についてです。同じ食事をしても、時間帯によって血糖値の上がりやすさが変わることをご存じでしょうか?
実は、私たちの身体には体内時計(サーカディアンリズム)があり、ホルモンの分泌や代謝の働きが1日の中でリズミカルに変動しています。このリズムが、血糖値にも大きな影響を与えています。
① 朝は血糖が上がりやすい?その理由は「コルチゾール」
朝起きてすぐの時間帯は、血糖がやや上がりやすくなっています。
これは、目を覚ます準備として分泌されるホルモン コルチゾール が、肝臓から糖を作り出す働きを促すためです。さらに、夜間の空腹時間が長いため、朝食後は「インスリンが効きにくい時間帯(=インスリン抵抗性が高い)」にもなりがちです。
そのため、朝食のメニュー選びや食べる順番を工夫すると、1日の血糖コントロールが大きく変わります。
② 昼は比較的コントロールしやすい時間帯
体内時計のリズムにより、日中はインスリンの効きが良くなる時間帯です。活動量が増えることもあり、同じ食事量でも血糖値が上がりにくい傾向があります。ただし、忙しいお昼は早食いや“ドカ食い”になりやすいため、急激な血糖上昇を招きやすい面もあります。また「よく噛む」「野菜から食べ始める」など、ちょっとした工夫が効果的です。
③ 夜は血糖値が最も上がりやすい時間帯
意外かもしれませんが、夕食が1日の中で最も血糖値が上がりやすい時間帯です。理由は大きく3つあります。まず1つ目はインスリンの働きが弱くなる時間帯、2つ目は夜は活動量が減り、糖を消費しにくい、そして3つ目は夕食が脂質や炭水化物中心のメニューになりやすい、加えて、21時以降の遅い夕食は血糖が翌朝まで高い状態が続きやすく、HbA1c悪化にも直結します。
④ 時間帯を意識するだけで、血糖コントロールはもっと楽に
食事内容は同じでも、「いつ食べるか」で血糖値は大きく変わります。
ポイントは次の3つです。
- 朝:主食は控えめ+野菜やタンパク質をしっかり
- 昼:よく噛んで食べる、食べる順番を意識
- 夜:遅い時間の炭水化物はできるだけ控える
生活スタイルは人それぞれですが、できる範囲で時間帯の工夫を取り入れてみると、無理なく血糖コントロールが改善します。
⑤ まとめ:時間帯を理解すると、血糖コントロールはもっとやさしくなる
血糖値は「何を食べるか」だけでなく、「いつ食べるか」によっても大きく変化します。
今回のお話を振り返ると――
- 朝はコルチゾールの影響で血糖が上がりやすい時間帯
- 昼はインスリンの効きが比較的よく、コントロールしやすい時間帯
- 夜はインスリン作用が弱まり、血糖が最も上がりやすい時間帯
- 自分の生活に合わせて時間帯を工夫することで、無理なく改善が可能
という特徴があり、日常のちょっとした工夫が血糖コントロールに直結します。血糖管理は完璧にすることではなく、続けられる範囲で少しずつ改善していくことが大切です。
時間帯のクセを知ることは、まさにその第一歩になります。
次回7回目は【 CGM(持続血糖測定)って何】 として、近年ニーズが高まっている CGM(持続血糖測定) についてお話しします。「自分の血糖値が1日どんな動きをしているのか知りたい」、「食事や運動の変化を数字で見てみたい」そんな方に役立つ、血糖の“見える化”のツールです。CGMを使うことで、血糖スパイク、夜間低血糖、食事ごとの血糖変化などが分かり、治療はもちろん日常生活の改善にもつながります。
次回もどうぞお楽しみに!

