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睡眠時無呼吸症候群シリーズ〜第1回 SASの歴史〜

皆さんこんにちは。院長の松本です。
今回からしばらくの間、”睡眠時無呼吸症候群(SAS)”についてお話ししていきます。
第1回は「SASの歴史」です。

睡眠時無呼吸症候群は英語で sleep apnea syndrome といい、その頭文字をとって SAS と呼ばれます。
SASという疾患概念が提唱されたのは、約50年前の1976年のことです。それまでは、現在のように明確な「病気」としては認識されていませんでした。

SASの概念に近い病名としては、1950年代に登場した「ピックウィック症候群」があります。
これは、チャールズ・ディケンスの小説『ピックウィック・クラブ』に登場する少年ジョーのイメージから名付けられました。

肥満体型の少年ジョーはいつも眠そうで、仕事中にいびきをかいて眠ってしまう様子が描かれています。

 

1966年になると、ピックウィック症候群の患者さんで、夜間に呼吸が止まる「無呼吸」がみられることが報告されました。
さらに1970年には、世界で最初の睡眠クリニックといわれる「スタンフォード睡眠障害クリニック」が設立されます。

そして1976年、
「睡眠中に10秒以上、口と鼻の気流が停止する現象=睡眠時無呼吸」
こそがこの病気の本質であるとスタンフォード大学から提唱され、SASは世界共通の疾患概念となりました。

1983年にはCPAP治療の初号機が開発され、SAS治療は大きく前進します。
ただし、日本でCPAP治療が保険適用となったのは1998年のことでした。

日本でSASという病気が広く知られるようになったのは、2003年頃と考えられます。
新幹線の運転士が約8分間の居眠り運転を起こし、車両が急停止した事例が大きく報道されたことがきっかけでした。

幸い負傷者はいませんでしたが、運転士がSASと診断されていたことから、
SASが重大事故につながる可能性のある病気として社会的に認識されるようになりました。

現在では運輸業界を中心にSAS健診が積極的に行われ、法令でもSASスクリーニングが推奨されています。

居眠り運転による JR 西日本山陽新幹線の事故

時速 270kmで走行中に運転士が約 8 分間居眠り運転を続けた後,自動運転制御装置によ り停止した.運転士は重症の SAS であったと判明した.

 

 

次回はSASが引き起こす様々な病気や疫学のお話をします。

ともに学びましょう!